2014年10月10日金曜日

◎講義 要旨◎  桂山 康司(京都大学大学院准教授)

まず、詩人としての評価が比較的安定しているジョン・キーツ(1795-1821)を取り上げ、その詩的表

現の特徴を考察する。次に、詩人としての評価が最近になるまで定まらず、むしろ、ポルノグラフィッ

クと貶められることの多かった王政復古期の詩人、ロチェスター伯(1647-80)の作品について考察

する。両詩人の作風は、一見したところでは、全く相容れない対極にあるように見えるが、果たして

そうであろうか。「詩的であること」の真価は、題材にではなく、言語表現の特質にこそ求めるべきも

のである事を、作品の精読を通じて検証し、更には、その作業を通じて、詩的言語の本質の一端を

明らかにしたい。

〇発表 要旨〇中野 阿佐子(D1)

形容詞「こわい」と「おそろしい」の一考察
―コロケーションに見る類似点・相違点―

本研究では恐怖を表す代表的な形容詞「こわい」と「おそろしい」について、コーパス(NINJAL for BCCWJ)を用いた[こわい/おそろしい+名詞]のコロケーションの分析から、その類似点と相違点を明らかにする。
ジャンル・年代別出現頻度と助詞に基づく統語関係に関して、両者間にはr=.82とr=.81という強い相関がみられる。両者はとりわけ(1)に示す「もの」「こと」との共起頻度が高く、(2)を含んだ「こわい」との共起語上位10語はすべて「おそろしい」とも共起関係にある。したがって加藤(2009)でも指摘されるように両者の類似性は明らかである。

(1)  -の、-もの、-ん、-こと、
(2)  -顔、-話、-人、-思い、-夢、-ところ

一方、以下に示すように共起関係には偏りがみられる。(※ここでは上位50語において共起が見受けられないことを?で示す)

(3)  a.-顔
b.(?こわい/恐ろしい)形相
c. (
こわい/?恐ろしい)顔付き
(4)  a. -人、-奴
b.(
?こわい/恐ろしい)人間、人物、男
c.(
こわい/?恐ろしい)おばさん、おじさん、父親、先生
(5)  (こわい/?恐ろしい)馬、動物、映画
(6)  (?こわい/恐ろしい)出来事、事件、事態、事故、殺人、犯罪、現実
(7)  (?こわい/恐ろしい)光景、音、力、勢い

「こわい」は(3c)和語あるいはより砕けた表現、(4c) (5)具体的な人物や対象物との共起が認められる。一方「おそろしい」は(3b)漢語や固い語で、 (4b)ある程度の抽象度を保った基本レベルの語彙、あるいは(6)抽象的な事象や(7)視覚、聴覚等の五感にかかわる語と共起する。ここに明示される両者のふるまいの違いは、「こわい」の方が話者にとってより直接的で具体性の強い恐怖感を表すことができ、「おそろしい」の方がより抽象的あるいは客観的な恐怖感を表すことができるということである。ここから「おそろしい」は「想像すると」といったより間接的な恐怖感を含む解釈が可能となることが説明される。
本研究では、「こわい」と「おそろしい」の類似点と無意識的な解釈と使用の区別をコロケーションの観点から分析し、考察した。
参考文献
石川慎一郎.2012.『ベーシックコーパス言語学』ひつじ書房
加藤恵梨.2009.「「こわい」と「おそろしい」の意味について」『名古屋大学日本語・日本文化論集第7号』pp1-20
後藤斉.1995.「言語研究のためのデータとしてのコーパスの概念について―日本語のコーパス言語学のために―」『東北大学言語学論集』4
寺村秀夫.1982.『日本語のシンタクスと意味 第Ⅰ巻』くろしお出版
中村明.2010.『日本語 語感の辞典』岩波書店
Leech, G. 1991b  Corpora. In: Malmkjaer (ed.) , The Linguistics encyclopedia,
London: Routledge.
Sinclair, J.  1991 Corpus, concordance collocation.  Oxford: Oxford
University Press.

参考URL
NINJAL-LWP for BCCWJ
http://nlb.ninjal.ac.jp/search/
KOTONOHA少納言

              http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/search_form

〇発表 要旨〇藤本 雄馬(D2)

The Intelligibility of English with a Japanese Accent:
Defining a continuum based on phonetic features

What does the English pronounced by Japanese people sound like? Many researchers have written about the characteristic features of Japanese people’s English pronunciation. Some say that there are many “mistakes” in it so it is not intelligible (e.g., Kamiyama, 2008). Others say that it is just different from other varieties and it is a legitimate variety of English; in other words, Japanese people’s so-called katakana English pronunciation is intelligible (e.g., Suenobu, 2010). These ideas are often thought to be polar opposite. However, it would seem that there is a “continuum” among these different ideas about Japanese people’s English pronunciation, though it is possible to group different ideas together at various points along the continuum.
This presentation aims to define this continuum which will be used as a basis to explore the intelligibility of Japanese people’s English pronunciation in my ongoing research.


〇発表 要旨〇玉木 雄三(元堺女子短期大学教授)

MidとWith、その競合の軌跡


前置詞mid(<OE mid)とwith(<OE wið)の戦いは13世紀初頭に始まり、14世紀末にはmidが完全に消滅するという、withの圧倒的勝利に終わった。その結果、to stay with a friendとto fight with an enemyに見られるように、withが「随伴」と「敵対」という対照的な意味を担うようになってしまったのである。
 これら2つの意味は元来、midとwithが分担していた。Mid stréameは「流れに沿って」(‘with the stream’)であり、wið stréameは「流れに逆らって」(‘against the stream’)であった。しかしmidに対するwithの攻勢は止まる所を知らず、ついにwithはmidのすべての意味領域を侵食してしまったのである。言語の大きな使命である明晰性の担保という観点からすると、この変化は決して好ましい史的発達ではなかった。
 それでは、このような意味の不明瞭さを招きかねない史的変化は、なぜ起こったのであろうか。これまで、いくつかの要因が想定されてきた。しかしこの変化は、複数の因子が重なり合って生じたものであることは間違いない。ラテン語cumや古ノルド語(Old Norse)viðの影響など、外的な要因を指摘する論説も根強く支持されている。
 本発表ではこれまでの研究を踏まえながら、withがmidの地位を脅かしていく過程において、現在のagainstにつながるOE起源のagain(ME aʒein, aʒen)が広く起用されていることに注目し、mid消滅の一因は英語の内的事情にあったということを明らかにしたい。

〇発表 要旨〇指出 尚枝(M1)

スペンサーの白鳥の歌
―『プロサレイミオン』再考―
                             

エドマンド・スペンサー(Edmund Spenser, 1552 - 1599)は16世紀英国、エリザベス1世の時代に活躍した宮廷詩人である。「スペンサー連」という韻文形式を作り出した詩人としてもよく知られている。チョーサー風の古風な文体も特徴的である。
スペンサーの作品中で最もよく知られるのは、エリザベス1世に捧げた『妖精女王』(The Faerie Queene 1590-1609)である。彼はこうした寿ぎの歌で評価されており、エリザベス・ボイルと詩人自身の結婚を歌った『祝婚歌』(Epithalamion1595)はそのうち最も評価の高いものである。『祝婚歌』と並んで祝いの歌として挙げられるのが、サマセット家の双子の娘たちの婚約を祝った『プロサレイミオン』(Prothalamion 1596)である。これはスペンサーが亡くなる直前に書かれたものであるが、『祝婚歌』に比べてあまり取り上げられていない。
本発表では、精読を通した『プロサレイミオン』の再評価を試みたい。まず、テクストの解釈を、過去の注釈を引用しながら確認する。次に、韻律などの音声面の分析から、『プロサレイミオン』に見られるスペンサーの文体の特徴を挙げていく。そして、テクストの意味と音とのコラボレーションを取り上げながら、流れ続けるテムズ川の時の経過と語り手の心情の変遷が響き合う様子を、詳細に分析してみたい。



参考文献
Andrew Hadfield. Edmund Spenser: a life. Oxford UP. 2012.
Jennifer, Klein, Morrison. Matthew, Geenfield, ed. Edmund Spenser: essays on culture and allegory. Aldershot ; Burlington : Asgate , 2000.
Hugh Maclean, Anne Lake Prescott. selected and edited. Edmund Spenser's poetry : authoritative texts, criticism. 3rd ed .New York : Norton, 1993.
Richard, A, McCabe.ed. The Oxford handbook of Edmund Spenser. Oxford: Oxford UP, 2010.
小田原謡子 訳 『スペンサーとその時代』南雲堂, 2011.
谷隆一郎 『詩人の詩人スペンサー日本スペンサー協会20周年論集』九州大学出版会,2006.

福田昇八 川西進 編著『詩人の王スペンサー』(財)九州出版会, 1997.

〇発表 要旨〇加藤 明子(M2)

          ハリー・ポッターにおける善と悪の対立

J.K. ローリング著『ハリー・ポッター』シリーズにおける主人公ハリーと宿敵ヴォルデモートを比較し、善と悪の対立について考察する。
主人公であるハリー・ポッターは1歳の時に、当時闇の魔法使いとして恐れられていたヴォルデモートによって両親を殺害される。ヴォルデモートはハリーも殺そうとしたが、呪いの呪文が跳ね返り、実体を失うこととなる。ハリーは伯母家族の元で11歳まで過ごすことになるが、その間自分が魔法使いであることは知らされていなかった。その後、ハリーはホグワーツ魔法魔術学校の入学許可証が届いたことで、自分が魔法使いであることと両親の死のいきさつを知ることになる。ハリーがホグワーツ魔法魔術学校へ入学するのと同じ年に、ヴォルデモートは復活に向けて動き出す。その動きを阻止するために、ハリーはヴォルデモートと対立を深めていく。
ハリーとヴォルデモートは敵対する関係にあるが、完全に対照的な存在というわけではない。生まれ育った境遇、血統、双子の杖、魂と血の繋がりといった2人に共通する点が数多く描かれている。つまり、ハリーが完全なる善でヴォルデモートが完全な悪という関係にない。本発表では、善と悪を分けたのか、ハリーが悪へと進まなかった理由は何かという点について掘り下げる。

<参考文献>
Barratt, Bethany. THE POLITICS OF HARRY POTTER. New York : PALGRAVE MACMILLAN,2012.
Heilman, Elizabeth E. Harry Potter’s World. New York: RoutledgeFalmer, 2003.
Kern, M. Edmund. The Wisdom of HARRY POTTER. New York: Prometheus Books, 2003.
Rowling, J.K., Harry Potter and the Philosopher’s Stone. London: Bloomsbury, 1997.
---.Harry Potter and the Chamber of Secrets. London: Bloomsbury, 1998.
---.Harry Potter and the Prisoner of Azkaban, London: Bloomsbury, 1999.
---.Harry Potter and the Goblet of Fire, London: Bloomsbury, 2000.
---.Harry Potter and the Order of the Phoenix, London: Bloomsbury, 2003.
---.Harry Potter and the Half-Blood Prince, London: Bloomsbury, 2005.
---.Harry Potter and the Deathly Hallows, London: Bloomsbury, 2007.
島田裕巳『ハリー・ポッター 現代の聖書』朝日新聞出版、2008。
ローリング、J.K.著、松岡佑子訳『ハリー・ポッターと賢者の石<携帯版>』静山社、2003。
---、『ハリー・ポッターと秘密の部屋<携帯版>』静山社、2004。
---、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人<携帯版>』静山社、2004。
---、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット<携帯版>』静山社、2006。
---、『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団<携帯版>』静山社、2008。
---、『ハリー・ポッターと謎のプリンス<携帯版>』静山社、2010。
---、『ハリー・ポッターと死の秘宝<携帯版>』静山社、2010。


〇発表 要旨〇上村 周平(D2)

申し訳ございません。

もうしばらくお待ち下さい。