2014年10月10日金曜日

〇発表 要旨〇玉木 雄三(元堺女子短期大学教授)

MidWith、その競合の軌跡


前置詞mid(OE mid)with(OE wið)の戦いは13世紀初頭に始まり、14世紀末にはmidが完全に消滅するという、withの圧倒的勝利に終わった。その結果、to stay with a friendto fight with an enemyに見られるように、withが「随伴」と「敵対」という対照的な意味を担うようになってしまったのである。
 これら2つの意味は元来、midwithが分担していた。Mid stréameは「流れに沿って」(‘with the stream’)であり、wið stréameは「流れに逆らって」(‘against the stream’)であった。しかしmidに対するwithの攻勢は止まる所を知らず、ついにwithmidのすべての意味領域を侵食してしまったのである。言語の大きな使命である明晰性の担保という観点からすると、この変化は決して好ましい史的発達ではなかった。
 それでは、このような意味の不明瞭さを招きかねない史的変化は、なぜ起こったのであろうか。これまで、いくつかの要因が想定されてきた。しかしこの変化は、複数の因子が重なり合って生じたものであることは間違いない。ラテン語cumや古ノルド語(Old Norse)viðの影響など、外的な要因を指摘する論説も根強く支持されている。
 本発表ではこれまでの研究を踏まえながら、withmidの地位を脅かしていく過程において、現在のagainstにつながるOE起源のagain(ME aʒein, aʒen)が広く起用されていることに注目し、mid消滅の一因は英語の内的事情にあったということを明らかにしたい。

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